2004年度日本水産学会大会 発表要旨

2004年4月2日 鹿児島大

繁殖価・収穫価の比較によるアユ放流と漁獲規制の相対評価

○森山彰久(東大海洋研)・原田泰志(三重大生資)・内田和男(中央水研)

[目的] アユの増殖方策として天然の再生産の増強が緊急の課題である。しかしアユでは,密度と環境収容力の大小によって成長率が大きく異なるため,密度効果を考慮しない従来のモデルでは再生産増大方策(放流・漁獲規制)の評価は困難である。本研究では,密度効果を導入した評価モデルを構築し,アユの密度効果が各方策におよぼす影響について検討した。

[方法] 繁殖価は「ある時点で一尾がもつ将来の繁殖価値」と定義される。天然魚と放流魚でいろいろな時点での繁殖価を比較することにより,放流や漁獲削減による再生産増大の効果を,方策間で相対的に評価できる。同様に「ある時点で一尾がもつ将来の漁獲価値」である収穫価を比較することにより,各方策に伴う年漁獲量の増減についても相対評価できる。アユ個体の成長率g(/日)とアユ現存量x(kg/m2)の関係を g=0.022-0.00017x としたモデルにより,繁殖価および収穫価を計算し,各方策間における効果の比較検討をおこなった。

[結果] 再生産増大効果:密度効果小・漁獲圧小のときには,放流効果および漁期はじめの漁獲削減効果は漁期終盤の漁獲削減効果より大きかった。密度効果小・漁獲圧大のときには,逆に終盤の漁獲削減効果のほうが大きかった。密度効果大のときには,漁獲圧の大小にかかわらず終盤の漁獲削減効果が,他の方策の効果より大きくなった。 漁獲の増減:密度効果小のときには放流による漁獲増加がおこるが,密度効果大のときには放流による漁獲減少もみられた。密度効果大・漁獲圧大のときには,漁期中盤の取り残しによる漁獲増加が最大になった。

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