2004年度水産学会発表要旨

2004年4月2日 鹿児島大学

ウによる捕食がアユ資源に及ぼす影響の数理モデルによる検討

○森山彰久(東大海洋研)・原田泰志(三重大生資)・内田和男(中央水研)

[目的] ウ(カワウ)によるアユ資源の捕食被害が大きな問題になっている。被害の大小には資源重量の成長率が大きな影響を与えると考えられ,被害の定量的予測においても,資源の密度依存的成長をとりいれた解析は重要であろう。本研究では1:一般的なアユ資源を想定した場合の,ウの捕食による資源・漁獲量への影響。2:ウの捕食による漁獲量や産卵親魚量の減少を軽減するための方策としての,ウ駆除および放流量増加の有効性の評価 の2点から検討を行った。

[方法] 単位面積あたりの資源重量 x(kg/m2)の成長と自然死亡、漁獲死亡、ウの捕食による変化を dx/dt = rx(1-x/k) -Mx-Fx-G で表す。rは内的自然増加率、kは環境収容力、Mは自然死亡係数、Fは漁獲係数である。r=0.63(/月), k=0.13(kg/m2),M=0.1(/月)とする。またGはウによる捕食量であり,一個体のウが一日に約500gのアユを捕食として計算する。総漁獲量および産卵親魚重量を評価尺度に検討を行う。

[結果] 1:アユ初期密度を0.05kg/m2,ウの密度を2000m2に1羽として計算した場合,F=0.3(/月)ならば漁獲量の0.8倍,F=0.6では0.6倍の量が,ウにより捕食されると見積もられた。F=0.3での漁獲量と産卵親魚量は,ウがいない場合のそれぞれ75%,60%であった。 2:ウの駆除とアユの放流増加の効果を比較した結果,Fが大きいこと・加入量が大きいことはいずれもウ駆除の重要性を相対的に高めることになった。また,漁獲量増加に比べて,親魚量確保のためのほうがよりウの駆除の放流に対する相対的有利さが大きくなった。

*修正: 学会要旨集の修正です。[結果]において,「Fが大きいこと・加入量が大きいこと・ウ密度が高いことはいずれも」→「Fが大きいこと・加入量が大きいことはいずれも」

研究pageへ戻る