2001年度水産学会発表要旨

2001年4月 東京水産大学

ウナギの資源管理と再生産効果に関する考察

○森山彰久・立川賢一(東大海洋研)

[目的] 近年,ウナギ成魚の漁獲量やシラスウナギ採捕量は激しく減少している。河川における親ウナギ,特に産卵回遊前の黄ウナギの漁獲や放流がウナギ資源の再生産量の増減に与える影響を推定することは,ウナギ資源の保護をおこなう上で将来の重要な課題である。ウナギの繁殖価(ある齢の個体1尾が次世代に残せる期待産仔数)を年齢ごとに見積もり,漁獲・放流が資源全体の再生産に与える影響を評価した。

[モデル] ニホンウナギに関する資源・生活史パラメータの詳細な知見は得られていないため,ヨーロッパウナギの知見も参考に,複数の妥当な値(パターン)を設定した。モデル構築上で4つの大きな仮定をおいた。・雌ウナギだけを計算の対象とする。・シラスの河川への遡上を計算上の始点(0歳)とする。・同一年齢個体間には体重等の個体差がなく,年齢に依存する特定の割合で降海し産卵する。・降海から産卵までの死亡率は年齢・体長に独立で,かつ産卵数と親魚の体重が比例関係にあると考え,降海時の親魚重量が将来の産仔数に比例する。

[結果] 多回産卵魚ではある年齢で繁殖価のピークが訪れるのに対し,1回産卵のウナギでは一般的に年齢が上がるごとに大きく繁殖価が増大する特徴があった。河川における漁獲圧が高いほど繁殖価の値自体は小さくなるが,加入時に対する成魚の繁殖価の相対値はかなり大きくなる。また,産卵回遊直前のウナギは特に繁殖価が高いため,このような個体を選択的に保護(再放流)することが可能ならば,資源管理の再生産効果が効率的に上がることが示唆された。

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