水産学会発表要旨

1997年9月29日 15:45-16:00,第1会場:No.148

放流魚産卵ポテンシャル指数の提唱と再生産期待型の種苗放流

森山彰久・松宮義晴(東大海洋研)

[目的] 再生産期待型の種苗放流は,資源管理(漁獲規制)などと同様に,対象資源の産卵資源量を増やす方策として注目されている。繁殖価(雌の親1尾がある時点から死ぬまでに残すと期待される雌の子の数)を資源全体に拡張した産卵ポテンシャル(Spawning Potential,勝川・松宮1997など)の概念を導入し,再生産期待型の種苗放流が資源に与える効果の大きさを数理的に表す方法を提唱する。

[方法] 再生産期待型の種苗放流の価値は,放流魚産卵ポテンシャル指数=放流魚の産卵ポテンシャル/[天然魚+放流魚]の産卵ポテンシャル で,再生産期待型の放流魚1尾の価値は,放流魚繁殖価指数=放流魚の繁殖価/天然魚の産卵ポテンシャル で表すことができる。これらの指数を用いることにより,資源全体の再生産量に対する種苗放流の寄与の大きさを相対的に見積もることが可能になる。

[適用] 太平洋中区のマダイ資源(資源管理型漁業推進総合対策事業)のデータに適用した。1983〜1988年における,太平洋中区の放流魚産卵ポテンシャル指数(年平均)は東海域(静岡県石廊崎以東)で約0.44,西海域で約0.05となった。

[展望] 放流魚産卵ポテンシャル指数と他のパラメータとの関連を精査した。いくつかの海域のマダイ資源における種苗放流の寄与の大きさの比較検討を行った。遺伝の問題や系群の大きさ等が放流魚産卵ポテンシャル指数による評価に与える影響についても展望した。

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