水産学会発表要旨

1997年4月3日 15:30-15:45,第2会場:No.238

再生産期待型の種苗放流効果とSPR型の資源管理との比較検討

森山彰久・松宮義晴(東大海洋研)

[目的]
 再生産期待型の種苗放流は,資源管理や産卵場造成などと同様に,資源の産卵資源量を増やす方策として注目されている。生態学の分野で用いられる繁殖価(雌親1尾がある時点から死ぬまでに残すと期待される雌の数)の概念を導入し,種苗放流と資源管理の再生産効果を数理的に比較検討した。産卵資源量を一定量増加させるための費用の概念を導入した場合に,種苗放流と資源管理のどちらの費用負担が小さいか計算した。

[方法]
 天然魚と放流魚の再生産能力に差がないと仮定し,ある年齢の天然魚の繁殖価を放流種苗の繁殖価で除した比を求める。この値は,天然魚1尾を漁獲しない資源管理と同じ効果を得る放流種苗の必要尾数を表す。必要尾数の種苗を生産する費用と,天然魚1尾の価格(漁獲しないことによる損失)を比較することにより,種苗放流と資源管理のどちらがより費用と損失の面で効率的か判断することができる。

[適用]
 回遊性魚類共同放流調査事業のマダイのデータに適用した。瀬戸内海西部海域では,放流種苗61尾と6歳魚1尾の管理が同じ再生産効果をもつ。漁獲マダイの価格を1kgあたり3000円,種苗生産の費用を種苗1尾あたり100円と仮定し,種苗放流と資源管理に要する費用を比較すると,種苗放流にかかる費用は資源管理による損失をかなり上回った。しかし,種苗の回収(再捕)による利益を種苗放流にかかる費用から差し引いて比較すると,種苗放流と資源管理にかかわる費用(損失)はほぼ同額になった。

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