1999年9月 宮城教育大
森山彰久・松宮義晴・勝川俊雄(東大海洋研)
[目的] 現在,資源管理の一方策として一部の魚種には許容漁獲量(TAC)が決められているが,種苗放流が行われる資源にはこの制度は適用されていない。放流魚が現在の資源に加入するのに時間がかかるため,その年の放流量の多少を許容漁獲量に反映させることはできない。一定の繁殖能力を確保しながら種苗放流量の多少に応じて許容漁獲量を決定する方法を検討した。
[資源管理と種苗放流の効果の比較] 資源のもつ繁殖能力は繁殖ポテンシャルRP(勝川・松宮1997,Katsukawa & Matsumiya 1998)を用いて表すことができる。許容漁獲量制で確保されるRPを計算することにより,種苗放流によるRPの添加量との比較が可能である。秋田県のハタハタ資源(資源特性値と1989年のデータ)に適用し,管理と放流による効果の大きさを比較した。漁獲を行わない場合の資源のRP(単位:卵百万個)は9385,資源量の50%を許容漁獲量とした場合に確保されるRPは 4150であった。放流魚によるRPの添加量は約57万尾放流の1989年で 153(資源管理により確保されるRPの3.7%)だったが,1994年には約503万尾が放流され1341(同32.3%)にまで増加した。
[許容漁獲量制に代わる方策] 一定の資源量を獲り残すかわりに一定のRPを獲り残す管理を行えば,漁獲量の規制により確保されるRPと放流によるRPの添加を合わせて,総合的に管理することが可能になる。一定の資源量またはRPを確保する方策下で様々な量の種苗放流を行った場合に,資源量・漁獲量にどう影響するかをハタハタ資源を対象としたシミュレーションを用いて調べた。