卒業論文

要旨(改訂版)

 両側回遊魚の多くで、仔魚の流下が日没直後に集中することが知られている.日本産両側回遊性ハゼ類では、明暗周期に対応し日没後に雄親魚が孵化を誘発、出巣させている種も知られている(ゴクラクハゼ、ヌマチチブなど).しかし、ヨシノボリ類については上流(Aa型)域では日中も仔魚の流下が観察されており、両側回遊性ハゼ類の仔魚の流下と明暗条件の関係については不明な点も多い.本研究では、ヌマチチブにおける雄親魚の行動と明暗周期との関係、および孵化との関係について実験を行い、以下の結論を得た.

1.日周期的な14Ll0D条件では、消灯後〈1例では減光期)に雄親魚による孵化誘発行動(律動的ブラッシング)が開始された.仔魚の一斉孵化は律動的ブラッシング終了後41〜45分で観察され、孵化仔魚は激しいファニングによって巣外に送り出された.

2.孵化予定前日の消灯時から明暗周期の位相を3時間前にずらした実験では、仔魚の孵化が減光前におき、雄親魚は孵化に反応して減光前に激しいファニングを行った.消灯時間だけを3時間早めた実験では、消灯後律動的ブラッシングが行われなかったにも関わらず孵化が始まった.この時の孵化は、雄親魚による律動的ブラッシングが行われた場合に比較して集中性に乏しかった.

3.自然状態での仔魚の流下の状況を確認するため、プランクトンネットを用いた野外調査を行った.仔魚の流下は日没後の約3時間以内に集中していた(全採集個体数の82〜94%).

4.雄親魚の孵化誘発行動(律動的ブラッシング)か日没直後に行われることによって、ヌマチチブ仔魚の流下は日没後に集中すると考えられた.律動的ブラッシングが行われなかった場合、孵化が集中しておきないことから、律動的ブラッシングには仔魚の孵化を同調させる効果もあると推定された.

5.明暗周期の位相をずらした1例では明記の間に孵化が始まった(孵化前の雄親魚の行動については観察できなかった).野外調査でも日中に仔魚の流下が観察されており,条件によっては自然状態でも日中に孵化が起こりうると推察された.


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