水産学会 発表要旨

1998年4月

放流効果の指標としての放流魚産卵ポテンシャル指数の概算と検討

森山彰久・松宮義晴(東大海洋研)

[目的] 再生産期待型の種苗放流は資源管理(漁獲規制など)と同様に,対象資源の産卵資源量を増やす方策として位置付けされる(森山・松宮1997,栽培技研26巻 1号)。放流効果の指標として,産卵ポテンシャル(資源尾数×繁殖価,現存資源が生涯に産む期待産卵数,SPと略す)の概念を応用した放流魚産卵ポテンシャル指数(放流魚のSP/[天然魚+放流魚]のSP)が提唱されている。漁業生産統計年表・放流実績などを用い,マダイやヒラメなど数種類の栽培対象種について,全国および水域別に本指数の概算を試みた。

[概算] 使用データは,対象種の漁獲量,放流尾数,放流から加入までの死亡率および繁殖価を得るための資源パラメータである。資源尾数は漁獲量から漁獲率・成長式などの適当な値を想定して推算した。マダイを例とすると,全国の放流魚産卵ポテンシャル指数は1986年 5.6%,1992年6.4%となった。8つの水域(海区)のうち太平洋中区が最大で,それぞれ20.5%と24.7%であった。

[検討] 放流魚産卵ポテンシャル指数の値は,対象種の系群あるいは水域の範囲設定によって異なる。系群の範囲をどのように水域と対応させたらよいか検討した。種類別水域別に,放流魚産卵ポテンシャル指数と資源尾数(または放流尾数)との関係についても考察した。

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